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声をかけただけで「いやだ」と言って逃げ回るのです。「M君自身の気持ちが、まだそこまで決まっていないようです。もう少し会いにきて下さい」という児相の励ましを頼りに、私たちは焦せる気持ちを抑えるのに必死でした。
そして、いよいよ引き取ることになった前日、M君は「おばさん、僕、やっぱり相談所にいますから」と最後の抵抗を試みたのです。しかし、それは動揺する心の内のもどかしさと、私たちの心情を推し量る幼い知恵であることが、切ないまでに胸へ迫ってくるのでした。
明けて一月二十七日、M君は神妙でした。保護課長さんから悟されて、心を決めたのでしょう。五歳の子供がこんな試練を乗り越えなければならないのです。それに比べたら、私たちはまだ甘い、と心に言い聞かせました。
帰途、千葉ポートタワーで食事をとりました。いくらか気持ちがなごんだようでしたが、お子様ランチを勧めると、「僕は大人だから、こんなものは食べたくない」と拒否しました。これは”宣戦布告”です。私たちの新しい戦いが始まったのです―。
あれから五ヶ月、悩みは尽きませんが、幼稚園生活にもすっかり慣れ、仲良しの友

 

 

 

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